日本の伝統文化の中で特別な位置を占める祭事には、古来より続く豊かな収穫への感謝と願いが込められています。
その中でも、全国の神社で11月23日に行われる「新嘗祭（にいなめさい）」は多くの人に広く知られています。
しかし、新嘗祭と同じくらい重要で、かつより古い歴史を持つ神事があります。「祈年祭」です。
ここでは、2024年の祈年祭について、その意義や読み方、そして新嘗祭との違いに焦点を当てて解説します。
祈年祭の読み方と意味
祈年祭は「きねんさい」と読みますが、「としごいのまつり」とも呼ばれています。
この祭りは、春の訪れとともに、特にお米を含む五穀の豊穣を願って神社で行われる神道の重要な儀式です。
この祭りは、日本の農耕文化に根ざしており、国の繁栄にも大きく関わってきました。
「としごいのまつり」という名の「とし」は稲を、「ごい（こい）」は祈りや願いを意味しています。
つまり、祈年祭は五穀豊穣を祈る行事というわけです。
かつては、お米や穀物の生産が生活の中心であり、五穀豊穣を願うことは国の安定や繁栄に直結していました。
そのため、国家が主導する祭事として行われてきました。
現在、祈年祭は宮中祭祀の一部として執り行われています。
宮中祭祀とは、皇居にある宮中三殿で天皇陛下が国家と国民の安寧と繁栄を祈る祭祀です。
宮中三殿とは、賢所（かしこどころ）、皇霊殿（こうれいでん）、神殿（しんでん）の三つの殿堂を指し、神道における重要な祀り場所です。
祈年祭の起源
祈年祭の起源は、農民が「田の神」への豊作を願う祭りであったとされています。
この祭りは、天武天皇（てんむてんのう・第40代天皇、在位673年～686年）の時代に国家祭祀として公式化され、その後全国の神社で広く行われるようになりました。
奈良時代（710年～794年）には、五穀豊穣、国家安泰、天皇安泰を祈る儀式としてその形式が確立し、平安時代（794年～1185年）には天照大御神（あまてらすおおみかみ）への豊作祈願として発展しました。
しかし、室町時代（1336年～1573年）の戦乱期には一時中断しましたが、明治時代（1868年～1912年）に重要な国家祭祀として復活しました（江戸時代にも復活の兆しがあったものの実現せず）。
この時期から、宮中だけでなく全国の神社では祈年祭が盛大に行われ、日本文化の一部として定着しました。
第二次世界大戦後、GHQの占領政策により国家神道が廃止されたため、祈年祭は国家祭祀から宮中祭祀へと変わりました。
しかし、その重要性は変わらず、現在も多くの神社で継続されています。
宮中祭祀は、天皇の私的行事として行われ、国事行為とは異なります。
ちなみに国事行為とは、天皇が日本国憲法に基づいて行う公的な行為のことです。
2024年の祈年祭
それでは、2024年の祈年祭はいつ行われるのでしょうか？
もともとは旧暦の2月4日（立春）に行われていた祈年祭ですが、明治6年（1873年）の新暦導入以降は毎年2月17日に固定されました。
そのため、2024年の祈年祭は2月17日（土）に行われます。地域によっては、3月や4月に春祭りとして行われることもあり、この時期に五穀豊穣を祈る農耕に関わる神事が多くの神社で行われます。
祈年祭と新嘗祭との違い
最後に、祈年祭と新嘗祭との違いについて触れておきましょう。
新嘗祭は毎年11月23日に行われる宮中祭祀で、五穀豊穣の収穫を感謝する祭りです。
一方、祈年祭は、五穀豊穣を祈る祭りで、これから始まる農作業に向けた願いが込められています。
祈年祭は2月17日に五穀豊穣を祈願し、新嘗祭は11月23日にその年の収穫に対する感謝を捧げるという点で、その性質が異なります。
祈年祭と新嘗祭はいずれも五穀豊穣に関連する重要な祭りですが、それぞれの祭りが持つ意味合いは異なります。
祈年祭は「これから始まる農作業に向けた祈り」であり、新嘗祭は「収穫を終えた後の感謝」の祭りと考えることができます。
これらの祭りに関する理解を深めることは、日本の農業と文化への理解を深めることにつながります。
まとめ
以上、2024年の祈年祭について、その日程、意味、読み方、そして新嘗祭との違いについてご紹介しました。
日本の伝統文化を深く理解するためにも、これらの祭りに注目してみると良いでしょう。
祈年祭は、年の始めに行われる五穀豊穣を願う神聖な儀式として、今も多くの人々に親しまれ、祝われ続けています。
